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soul ofどんと 2007
〜どんとトリビュート SOUL SHOW〜
 
 “soul ofどんと”が、どんとの命日に開かれる様になって、早5年目。
 このイベントは新しい形のバイブレーション・イベントとして、始まった当初から伝説化してきた。どんとが天国へと旅立った00年以降、アンダーグラウンドシーンでさざ波が広がる様に、どんとの歌とその存在が口コミで広がっていくムーブメントが起こった。その一方でこのsoul ofどんとは、まさに今の日本のメジャーシーンを舞台に、第一線で活躍しているミュージシャンが集い、どんとのスピリットを分かち合いながら競演するという音楽業界でも希有なイベントである。これは、単なる追悼イベントには決して成り得ない。「どんと」というあるひとりのミュージシャンのスピリットにリンクしたミュージシャン・スタッフ・そして観客が一体となって、その場をシェアし、ともにつくりあげていくときに生まれる、新たな創造のバイブレーション。だからこそ、一回目にして伝説を作ったと言われるこのイベントがもう5歳を迎えたのだ。
 ステージからも、客席からも純粋なヨロコビがいつも満ちあふれるsoul of どんと。それはどんとが音楽を深く愛していたからだ。音楽を通して、そこに生まれていく新しい世界、新しいつながり、エネルギー。生み続けているのは、そこに居合わせた全員だ。そこはとてもpeacefulで、希望的で、エネルギーに満ちあふれた未来に向けた宇宙船のようだ。どんとはやっぱり、spacy song star。




 soul ofどんとが 渋谷AXに帰って来た!
 そう、昨年は7周忌だったため、soul ofどんとは「どんと紅白」として豪華絢爛の出演者とともにNHKホールに「出張」していた。そして昨秋には「soul ofどんとin沖縄」が沖縄市民ホールにて、盛大に開催。そんなお祭り騒ぎの七回忌/06年を過ぎて、渋谷AXに帰ってきた今年。一巡りして、新たなステージに入っていることを予感させる07年。
 会場に入ると早速始まる映像。かつてテレビ番組でどんとが一人で歌うコーナーがあり、それを編集した貴重な映像。波打ち際で弾き終えたギターを砂に突き立てたり、沖縄の花咲き乱れる中艶やかな衣装で熱唱していたりと、どれも目が離せない。「魚ごっこ」では「地軸が傾いて、海と陸がひっくりかえったら、人間は海に出ていこう〜」なんて言っている。聞くところによると、地球の地軸は本当に数百万年ごとに動いて、極がひっくり返ったりするらしい。どんとはこんなことをどうして知っているのだろう?
 などと始めから映像で吹っ飛ばされていると、あわや始まるオンステージ。
今やsoul ofどんとには欠かせない名司会?ボ・ガンボスのDr.kyOnが幕を切る。続けて勢いよく、うつみようこ(exソウル・フラワー・ユニオン)がジャニスの「メルセデス・ベンツ」を。しょっぱなから圧巻の歌いっぷりだ。白根賢一のドラムとtatsuのベースが太い柱で、うたを支えのせていく。
 初参加のCaravanは「高校生の頃からどんとさんが大好きで、代々木公園のコンサート・ビデオには学ラン姿の僕が映っているのがうれしい」と、ドラムのPすけとともに「あたたかい方へ」を披露。ローザ・ルクセンブルグの名ギタリスト、玉城宏志は真っ赤なジャケットをひるがえして「フォークの神様」を熱唱する。前へ、前へと迫って狂い弾かれるギターの音がスパイラルに天井を昇って行く。
 さあここで、ソウルオブ〜初出場の土屋公平(ex THE STREET SRIDERS,蘭丸)が登場。Dr.KyOnとともに「Janky Cowboy Blues」を、そしてうつみようこをボーカルに迎えて「絶体絶命」をプレイ。こんな組み合わせが見られるのも、ここならでは。うつみが天を指して絶叫する「絶体絶命」と、蘭丸の踊るギターがからみあい、まるで神おろしをしているようなステージ。会場のボルテージは上がりっ放しだ。



うつみようこ


Caravan



 ここで、どんとのパートナーであり、ソウルオブ〜の主催者でもある小嶋さちほがステージへ。
会場に満ちた熱気は、そのまま熱を帯びた静寂を生み出し、小嶋がライア(竪琴)を手にして歌う「波」が染み入る様に流れて行く。「どうして“波は黒くなってもいいのさ”と歌うの?海が汚れてもいいということ?」と生前に尋ねた小嶋に、どんとはこんな風に答えたと言う。「海は人間には計り知れない悠久の時の中にある。海をどんなに汚したって、波は何度も寄せては返しながら海を浄化していくけど、汚したゴミは波打ち際に返されて人間のところに帰ってくるから、結局困るのは海じゃなく人間なんだよ」 黒くなってもいいのさ〜、のあとには“この世が朽ちても終わりはしない”と続くこの「波」は、“歌い継がれゆくうた”の一つとして、この7年間世代を超えた人々の間に静かに広がっている。ちなみに、ギターサポートには16歳になるどんとの長男、ラキ太が入る。寝ても覚めてもギターを離さない高校生の、素直でまっすぐなギターを聞かせてくれた。



玉城宏志


小嶋さちほ



 「波」を歌い終えた小嶋に「よかったよ」と声をかけながら登場したのは、どんとが敬愛してやまなかった歌う詩人、友部正人。ロック畑の出演者が多い中で、この日本の誇るフォークシンガーは、とりわけ独特なオーラを放つ。どんとがソロ活動を始め、ひとりでギターを片手に全国津々浦々を歌いまわる旅を始めたのは、友部のスタイルに影響されたと後にどんと自身が語っている。
「死んじゃうなんて思わなかったね。(飲めない)お酒を、がんばって飲むのつきあってくれたね」そう静かに語りかけて、読み上げたのはどんとが友部へファックスで送った一通の手紙。「美しいうた」を歌う友部へ「さみしい心の友達」と呼びかけるどんとの言葉は、感情としての寂しさではない、どこか日本人特有の「もののあはれ」といった昇華された感情としての「さみしさ」を言葉にしているようにも感じる。友部が歌った「孤独な詩人」はまさに、そんなどんとの孤高の精神世界を象徴している歌だ。
 ここで、がらりと華やかな花がステージに咲いた! 元ちとせがステージ真ん中に踊りでる。
「元ちとせです!みなさん知ってますか〜〜??」知らぬ人はおよそいないであろう、この奄美出身の歌姫はDr.kyOnとの縁で、どんとのことを知ったと言う。何度かシークレットで沖縄のどんとイベントにも訪ねてきている元は、「あこがれの地へ」を大熱唱。イェィ!イェイ!の叫びが会場を席巻していく。
  会場一体となってまさに「あこがれの地」に向いだしたフィナーレ、とうとうYO-KINGの登場! 「真心ブラザーズは倉持君の顔がいいから売れたんだよね、とどんとに言われた」といって客席を沸かせたYO-KINGはどんとへの熱い思いをいっぱいにして「ダイナマイトに火をつけろ」を熱唱、2階の椅子席の観客を次々と立ち上がらせ、踊らせて行く。



YO-KING



 最後は、オールスターズで「どんとマンボ」。まるで会場に大きな花火が打ち上がったようだ。
どんと!どんと!どんと、マンボ! 一流のミュージシャンがステージに集結しながら、まるで家族のようなクローズリーな暖かささえにじみだしている、不思議な空間。
 花火が消えた後も、しばらく夜空をぽかんと眺めてしまうように、ステージが終わっても誰も席を立とうとしない。一瞬の感動の静寂が、会場を包む。ラストの映像「カーニバル」が流れ出す。
「花を飾っておくれ 倒れた男の上に ほんとにあいつは 楽しいやつさ」
 渋谷AXがたくさんの目に見えない花で、埋め尽くされたようだった。そうして、観客はもちろん、ミュージシャンも、スタッフもそれぞれの胸の中に、新たな花の種を持ち帰ったに違いない。
どんとの音楽をとおしてまかれた種が、あちこちで花を咲かせてゆく。
 ありがとう!どんと。ありがとう!素晴らしい心意気を見せてくれたミュージシャン&スタッフのみなさん。 来年またここで、みんなでspacy song starの花を咲かせたい。素晴らしきステージへ、感謝を込めて。

(Text:若葉みどり、Photo:Takeshi Dodo)



「soul of どんと」バンド




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